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タイトル ノロウイルス検査
記事No 2277
投稿日 : 2010/02/17(Wed) 09:24
投稿者 牡蠣シチュー
検査方法についての質問になりますが、
ノロウイルスの検査方法で、
RT−PCR と リアルタイムPCRの検査方法や検査の仕組み
の違いを、素人でも判るように教えて頂ければと思います。
ご存知のかた、いらっしゃいましたら、宜しくお願いします。

タイトル Re: ノロウイルス検査
記事No 2278
投稿日 : 2010/02/17(Wed) 10:45
投稿者 滅菌済み
まずはノロウイルスというウイルスについてですけれど、ノロウイルスは私たちヒトや他の動物、カビや細菌と違って遺伝子がDNA でなくRNAという物質です。通常PCR 法はDNA の中にある特定の部分を狙って試験をするのですが、DNA を持たないノロウイルスではPCR 法での試験ができません。そこでこのRNA を標的としてPCR で検査するときには、ある試薬を使ってRNA をDNA に変える必要があるのです。
 この、RNA をDNA に変換する試薬が逆転写酵素(Reverse transcriptase)というものでこの試薬を使ってから行うPCR を頭文字からとってRT-PCR と呼んでいます。
(正確には Reverse transcription polymerase chain reactionでRT-PCR )

 さてReal time PCR ですがこれも頭文字がRT になるので混乱があるようです。
 通常のPCR で特定のDNA が増幅したかしていないかを確認するときは電気泳動をして、目的のサイズのバンドがあるか無いかで確認をしています。これに対してReal time PCR ではPCR 反応を行うときにDNA が増えると蛍光を発する蛍光試薬をPCRチューブに入れて、蛍光測定ができる特殊なPCR 装置で試験することで電気泳動をしなくてもDNA が増幅したことを確認することができます。

この手法を使うことで
1) 電気泳動をしなくてすむ
  電気泳動の時間と、泳動後の染色に使うエチジウムブロマイドのような危険な試薬を使わないですむ。

2)定量 PCR 法ができる
 PCR はだいたい25 サイクルから40サイクルくらい反応を繰り返しますけれど、この間にずっと蛍光を測定していって、少ない反応回数で蛍光が現れたら試料のなかに目的とする微生物が多く存在していることになります。

たとえばA, B, C の3つの試料の中のサルモネラをReal time PCR 法で測定したとします。
A の試料はPCR を始めて10サイクル目に蛍光が出ました。
B の試料は40サイクルかけても蛍光は出ませんでした。
C の試料は30サイクル目で蛍光が出ました。
こんな結果があった場合
A>C>B の順番で試料がサルモネラに汚染されていることになります。

最後に、ノロウイルスの検査などでは
Real time RT-PCR とよばれる方法があります。
これは逆転写酵素(Reverse transcriptase) でノロウイルスの遺伝子のRNA をDNA に変換した後で、Real time PCR でそのDNA の量を測定することでノロウイルスの量を測定する方法です。

もしわかりにくいのであれば更に質問して下さい(どこがわかりにくかったかをつけて)。

タイトル Re^2: ノロウイルス検査
記事No 2279
投稿日 : 2010/02/17(Wed) 18:34
投稿者 牡蠣シチュー
滅菌済みさん、早速の返答、ありがとうございます。
大変参考になりました。
正直、何となく判り、判ってくるほど、判らないところがでてきました。

3点ほど、質問になりますが、
@電気泳動にて目的のサイズのバンドとございますが、
電気泳動はどういうものでしょうか。また、電気泳動により、
目的とするDNAを特定できるということでしょうか。

A蛍光測定とは、何でしょうか。G-C、A-Tのようなものが判るのでしょうか。

BノロウイルスはDNAを持たないとございますが、
ノロウイルスの検査は、すべてリアルタイムRT-PCR
ということになりますか。

急ぎませんので、お教え下されば幸いでございます。

タイトル Re^3: ノロウイルス検査
記事No 2280
投稿日 : 2010/02/18(Thu) 17:49
投稿者 滅菌済み
牡蠣シチューさま
長くなるので3回くらいのシリーズで分けて回答いたします。

> @電気泳動にて目的のサイズのバンドとございますが、
> 電気泳動はどういうものでしょうか。また、電気泳動により、
> 目的とするDNAを特定できるということでしょうか。

先ずPCR 法についてお話しします。
PCR 法ではサルモネラであればサルモネラのDNA にある特定の部分を増やす事を行います。
すなわち、
1. 食品などの試料からDNA をとりだす。
 このDNA には食品の原料(鶏肉とか卵とか)のDNA 、
 付着している微生物のDNA が含まれています。

2.PCR の反応を行ってDNA の 特定の部分を増やします。
 このときにサルモネラの検査であればサルモネラの遺伝子の
 特定の部分だけが増えるようにしておきます。
 サルモネラがいれば一定の長さの短いDNA だけが増えてきます。

3.増えたことを何らかの方法で確認します
 この方法の一つが電気泳動といわれる方法です
http://bunseiserver.pharm.hokudai.ac.jp/gihou/eidou.html
くわしくはこちらを見てください。

アガロースという寒天のような固まりに試料を打ち込んで
電気を流すことで、DNA は同じ大きさのものの
固まりがバンド(棒状の固まり)として見ることができます。

このときにPCR 法で増えたDNA の大きさが理論上出てくるはずの
DNA の大きさと違ったら何らかの理由で違う部分が
増えてしまったということになります。

タイトル Re^3: ノロウイルス検査
記事No 2281
投稿日 : 2010/02/19(Fri) 10:10
投稿者 滅菌済み
第二話です

> A蛍光測定とは、何でしょうか。G-C、A-Tのようなものが判るのでしょうか。

ここでは最も単純(と私が思っている)サイバーグリーン法によるものを中心にお話しします。

詳しくはここも参照して下さい
http://www.takara-bio.co.jp/prt/h1-3a.htm

PCR 法は遺伝子にある特定の部分を増やすことで、増えたら試験管の中に目的とする生き物がいた、増えなかったらいなかったという判定をします。

この増えた増えなかったを判定する方法の1つが先に述べた電気泳動法でもう1つが蛍光検出となります。

まず、PCR を行うときの試験管にDNA と結合して蛍光を発する試薬であるサイバーグリーンという試薬を一緒に入れておきます。そしてPCR を行うときに蛍光を検出できる特殊なPCR 装置をつかって、蛍光を測りながら反応を行います。

こうすることで蛍光の光が強くなったらDNA が増えたということになります。そして、ここからがこのReal time PCR の特徴となる部分ですが、試料の中に目的とする生物(例えばサルモネラ)が多くいた場合はPCRを始めてからすぐにDNA が増えて蛍光を発します。逆に少なかったら蛍光を発するまでに時間がかかります。

そのため、試験管の蛍光を測り続けて蛍光が早段階で発せられたら試料の中に多量の目的の生物(サルモネラ)がいたことになり、少なければあまりいなかったことになります。

これが先の回答で言った定量(多いか少ないかをしらべる)ということです。

これまでのPCR 法では「いるかいないか」を調べることはできましたが、この「多いか少ないか」を調べるのは苦手でした(全くできない訳ではなかったのですが)。それを改良したのがこのReal time PCR という方法なのです。

第三話に続く

タイトル Re^3: ノロウイルス検査
記事No 2282
投稿日 : 2010/02/19(Fri) 17:47
投稿者 滅菌済み
第三話

> BノロウイルスはDNAを持たないとございますが、
> ノロウイルスの検査は、すべてリアルタイムRT-PCR
> ということになりますか。

ノロウイルスの検査ではRT-PCR リアルタイムRT-PCR ともに用いられています。
また、免疫を利用したELISA(エライザ)やイムノクロマト法という方法もありますし、歴史的には電子顕微鏡を用いた検査もあります。ただし、これらの方法は高濃度のウイルスが必要なので糞便の検査がほとんどです。

参考
http://idsc.nih.go.jp/iasr/28/332/dj332a.html


食品からノロウイルスを検出したいのであればおそらく厚生労働省が

http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/kanshi/dl/031105-1a.pdf

に示した方法などで濃縮してからRT-PCR あるいはReal time RT-PCR を行う事になるでしょう。

またわからないことがあったらお願いします。

タイトル Re^4: ノロウイルス検査
記事No 2283
投稿日 : 2010/02/22(Mon) 19:49
投稿者 牡蠣シチュー
滅菌済みさま、
3回にわたり、詳しく説明して頂きまして、大変ありがとうございます。おかげさまでイメージができました。(でも混乱中です。)
またご質問になってしまいますが、
@牡蠣検査のRT-PCRの結果は「陰性、陽性」、
 リアルタイムPCRは、定量になりますが、「多いか少ないか」を
 調べた場合、ノロウイルス陽性の線引きはあるのでしょうか。

宜しくお願いいたします。

タイトル Re^5: ノロウイルス検査
記事No 2284
投稿日 : 2010/02/24(Wed) 14:14
投稿者 滅菌済み
牡蠣シチューさま


ノロウイルスに関する規格基準はなさそうです。
もともと10〜100 個体取り込むと発症するようなものですから基準の策定は難しいと思われます。


基準については私もそれほど詳しいわけではないので、
はっきりしたことは言えないのですが・・・。


このような案はあるようですが
www.fsc.go.jp/senmon/biseibutu_virus/b_v_dai8/b_v8-siryou4.pdf

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/08/txt/s0817-4.txt

タイトル Re^6: ノロウイルス検査
記事No 2285
投稿日 : 2010/02/25(Thu) 12:09
投稿者 牡蠣シチュー
滅菌済みさん、
貴重な資料有難うございます。
勉強してみます。

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