タイトル |
: Re: ノロウイルス検査 |
記事No |
: 2278 |
投稿日 |
: 2010/02/17(Wed) 10:45 |
投稿者 |
: 滅菌済み |
まずはノロウイルスというウイルスについてですけれど、ノロウイルスは私たちヒトや他の動物、カビや細菌と違って遺伝子がDNA
でなくRNAという物質です。通常PCR 法はDNA
の中にある特定の部分を狙って試験をするのですが、DNA
を持たないノロウイルスではPCR 法での試験ができません。そこでこのRNA
を標的としてPCR で検査するときには、ある試薬を使ってRNA
をDNA に変える必要があるのです。
この、RNA をDNA に変換する試薬が逆転写酵素(Reverse
transcriptase)というものでこの試薬を使ってから行うPCR
を頭文字からとってRT-PCR と呼んでいます。
(正確には Reverse transcription polymerase
chain reactionでRT-PCR )
さてReal time PCR ですがこれも頭文字がRT
になるので混乱があるようです。
通常のPCR で特定のDNA が増幅したかしていないかを確認するときは電気泳動をして、目的のサイズのバンドがあるか無いかで確認をしています。これに対してReal
time PCR ではPCR 反応を行うときにDNA が増えると蛍光を発する蛍光試薬をPCRチューブに入れて、蛍光測定ができる特殊なPCR
装置で試験することで電気泳動をしなくてもDNA
が増幅したことを確認することができます。
この手法を使うことで
1) 電気泳動をしなくてすむ
電気泳動の時間と、泳動後の染色に使うエチジウムブロマイドのような危険な試薬を使わないですむ。
2)定量 PCR 法ができる
PCR はだいたい25 サイクルから40サイクルくらい反応を繰り返しますけれど、この間にずっと蛍光を測定していって、少ない反応回数で蛍光が現れたら試料のなかに目的とする微生物が多く存在していることになります。
たとえばA, B, C の3つの試料の中のサルモネラをReal
time PCR 法で測定したとします。
A の試料はPCR を始めて10サイクル目に蛍光が出ました。
B の試料は40サイクルかけても蛍光は出ませんでした。
C の試料は30サイクル目で蛍光が出ました。
こんな結果があった場合
A>C>B の順番で試料がサルモネラに汚染されていることになります。
最後に、ノロウイルスの検査などでは
Real time RT-PCR とよばれる方法があります。
これは逆転写酵素(Reverse transcriptase) でノロウイルスの遺伝子のRNA
をDNA に変換した後で、Real time PCR でそのDNA
の量を測定することでノロウイルスの量を測定する方法です。
もしわかりにくいのであれば更に質問して下さい(どこがわかりにくかったかをつけて)。
|