「食品、添加物等の規格基準」(昭和三十四年十二月二十八日)(厚生省告示第三百七十号) P13
○ 穀類,豆類及び野菜
1 穀類及び豆類の成分規格
次の表の第1欄に掲げる穀類又は豆類は,同表第2欄に掲げる物をそれぞれ同表第3欄に定める量を超えて(ただし,同表第2欄に掲げるカドミウム及びその化合物にあつては同表第3欄に定める量以上)含有するものであつてはならない。この場合において,同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは,次の2に規定する試験法によつて試験した場合に,その物が検出されるものであつてはならない。
によつて試験した場合に,その物が検出されるものであつてはならない。
第1欄
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第2欄
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第3欄
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米
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カドミウム及びその化合物
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Cdとして1.0ppm
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大豆
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シアン化合物
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不検出
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小豆類
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シアン化合物
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不検出(ただし,サルタニ豆,サルタピア豆,バター豆,ペギア豆,ホワイト豆及びライマ豆にあつてはHCNとして500ppm)
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えんどう
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シアン化合物
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不検出
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そら豆
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シアン化合物
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不検出
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らつかせい
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シアン化合物
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不検出
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その他の豆類
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シアン化合物
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不検出
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2 穀類及び豆類の成分規格の試験法
(1) 検体
食品
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検体
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米
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玄米
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えんどう,小豆類,そら豆及び大豆
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豆
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らつかせい
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殻を除去したもの
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その他の豆類
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豆
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(2) カドミウム試験法
カドミウムの定量法は,1.に示す原子吸光法による。ただし,2.に示すジチゾン・クロロホルム法によることができる。
1.原子吸光法
a 装置
原子吸光光度計
光源 カドミウムホローカソードランプ
燃料 アセチレン又は水素
b 試薬・試液
次に示すもの以外は,第2 添加物の部C 試薬・試液等の項に示すものを用いる。
カドミウム標準溶液 金属カドミウム0.100gを10%硝酸50mlに溶かし,煮沸し,水を加えて1,000mlとする。この10mlを採り,水を加えて1,000mlとする。
カドミウム標準溶液1ml=1?g Cd2+
1%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム溶液 ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム1gを水に溶かして100mlとする。
25%酒石酸カリウムナトリウム溶液 酒石酸カリウムナトリウム25gを水に溶かして100mlとする。
c 試料の調製
検体約10〜30gを精密に量り採り,300mlのケールダールフラスコに入れ,水10〜40ml及び硝酸40mlを加え,よく混和した後,穏やかに加熱する。暫時加熱した後,放冷し,硫酸20mlを加え,再び加熱する。その間,必要があれば時々少量ずつ硝酸を加える。内容物が淡黄色から無色の透明な液になれば分解は完了する。冷後水を加えて全量を100mlとする。
別に,分解に用いた酸と同量の酸を採り,試料と同様に操作して空試験溶液とする。
d 試験操作
試料Vml(Cd2+として0.5〜20?gの範囲で50ml以下の量)を採り,25%酒石酸カリウムナトリウム溶液5mlを加え,次にブロモチモールブルー試液2滴を加えた後,液の色が淡黄色から青紫色になるまでアンモニア水で中和し,更に水を加えて100mlとする。これに飽和硫酸アンモニウム溶液10mlを加え,次いで1%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム溶液5mlを加え,数分間放置した後,メチルイソブチルケトン10mlを正確に加え,振とう機を用いて約5分間激しく振り混ぜた後,静置し,メチルイソブチルケトン層を分取し,波長228.8nmで吸光度Aを測定する。
別に,カドミウム標準溶液V'ml(5〜20ml)及び空試験溶液Vmlを採り,それぞれ試料の場合と同様に操作して吸光度As及びAoを測定する。
検体中のカドミウム濃度C(ppm)は次式により求める。
C(ppm)=V'×((A−Ao)/(As−Ao))×(試料溶液全量(ml)/V)×(1/検体採取量(g))
2.ジチゾン・クロロホルム法
a 装置
第2 添加物の部B 一般試験法の項の吸光度測定法の装置を準用する。
b 試薬・試液
次に示すもの以外は,第2 添加物の部C 試薬・試液等の項に示すものを用いる。
20%塩酸ヒドロキシルアミン溶液 塩酸ヒドロキシルアミン20gを水に溶かして100mlとする。
カドミウム標準溶液 金属カドミウム0.100gを10%硝酸50mlに溶かし,煮沸し,水を加えて100mlとする。この10mlを採り,水を加えて1,000mlとする。
カドミウム標準溶液1ml=10?g Cd2+
ジチゾン・クロロホルム溶液 ジチゾンを乳鉢ですりつぶし,その0.05gをクロロホルム(新たに蒸留したもの,以下同じ。)100mlに溶かし,これにアンモニア水の溶液(1→100)100mlを加え,振り混ぜた後,静置し,水層を分取する。クロロホルム層をアンモニア水の溶液(1→100)100mlずつを用いて2回同様に操作し,水層を合わせ,この水層をクロロホルム20mlずつを用いて3回洗う。次いで水層に塩酸(1→2)を加えてわずかに酸性とした後,クロロホルム200mlずつを用いて2回抽出する。クロロホルム層を合わせ,更にクロロホルムを加えて全量を約1,000mlとし,ジチゾン・クロロホルム原液とする。原液は遮光して冷所に保存する。
原液をクロロホルムで10倍に薄めた溶液について,クロロホルムを対照液とし,層長10mmで,波長605nm付近の極大波長における吸光度Aを測定する。
次に,原液(20,000/(62×A))mlを採り,クロロホルムを加えて正確に1,000mlとする。
用時調製する。
ジチゾン・クロロホルム溶液1,000ml=20mgC18H12N4S
25%酒石酸カリウムナトリウム溶液 酒石酸カリウムナトリウム25gを水に溶かして100mlとする。
2%酒石酸溶液 酒石酸2gを水に溶かして100mlとする。
水酸化ナトリウム・シアン化カリウム溶液(A) 水酸化ナトリウム40g及びシアン化カリウム1.0gを水に溶かして100mlとする。
水酸化ナトリウム・シアン化カリウム溶液(B) 水酸化ナトリウム40g及びシアン化カリウム0.05gを水に溶かして100mlとする。
c 試料の調製
検体約10〜30gを精密に量り採り,300mlのケールダールフラスコに入れ,水10〜40ml及び硝酸40mlを加え,よく混和した後,穏やかに加熱する。暫時加熱した後,放冷し,硫酸20mlを加え,再び加熱する。その間,必要があれば時々少量ずつ硝酸を加える。内容物が淡黄色〜無色の透明な液になれば分解は完了する。冷後飽和シュウ酸アンモニウム溶液25mlを加えて硫酸の白煙が発生するまで加熱する。冷後水約50ml及び20%塩酸ヒドロキシルアミン溶液2mlを加えた後,ジチゾン・クロロホルム溶液10mlずつでジチゾンの緑が残るまで抽出を繰り返し,次いでクロロホルム10〜20mlずつで1〜2回振り混ぜた後,静置し,クロロホルム層は捨てる。水層に25%酒石酸カリウムナトリウム溶液5ml及びメチルオレンジ試液2滴を加え,アンモニア水で中和した後,水を加えて100mlとし,これを試料とする。
d 試験操作
試料25mlを分液漏斗に入れ,25%酒石酸カリウムナトリウム溶液5ml,水酸化ナトリウム・シアン化カリウム溶液(A)5ml,20%塩酸ヒドロキシルアミン溶液1ml及びジチゾン・クロロホルム溶液10mlを加え,1分間振り混ぜた後,静置し,クロロホルム層をあらかじめ2%酒石酸溶液25mlを入れた別の分液漏斗に分取する。水層は,更にジチゾン・クロロホルム溶液10ml及び5mlを用いて2回抽出し,クロロホルム層は先に分取したクロロホルム層に合わせ,2分間振り混ぜた後,静置し,下層のクロロホルム層を捨てる。水層はクロロホルム5mlを用いて洗い,クロロホルム層を捨てる。
水層に20%塩酸ヒドロキシルアミン溶液1ml,水酸化ナトリウム・シアン化カリウム溶液(B)5ml及びジチゾン・クロロホルム溶液10mlを加え,1分間振り混ぜた後,静置し,下層のクロロホルム層を乾燥したろ紙でろ過し,25mlのメスフラスコに移す。水層は,更にジチゾン・クロロホルム溶液10ml及び5mlを用いて2回抽出し,クロロホルム層を乾燥したろ紙でろ過し,25mlのメスフラスコに合わせ,クロロホルムを加えて全量を25mlとする。この液につき,層長10mmで波長520nm付近の極大波長における吸光度Aを第2 添加物の部B 一般試験法の項の吸光度測定法の操作法に準じて測定する。
別に,カドミウム標準溶液2mlを採り,水を加えて全量を25mlとしたもの及び水25mlの両者をそれぞれc 試料の調製及び上記の試験操作に従つて同様に処理し,吸光度As及びAoを測定する。対照液はクロロホルムを用いる。
検体中のカドミウム濃度C(ppm)は次式により求める。
C(ppm)=20×((A−Ao)/(As−Ao))×(試料溶液全量(ml)/試料採取量(ml))×(1/検体採取量(g))
(3) シアン化合物試験法
1.試薬・試液
次に示すもの以外は,第2 添加物の部C 試薬・試液等の項に示すものを用いる。
クエン酸緩衝液 クエン酸128.1g及び水酸化ナトリウム64.4gを水に溶かして1Lとし,用時10倍容に薄め,クエン酸溶液及び水酸化ナトリウム溶液でpHを5.9に調整する。
ピクリン酸紙 ろ紙をピクリン酸飽和水溶液に浸し,室温で乾燥した後,7mm×40mmの大きさに切り,用時10%炭酸ナトリウム溶液で潤す。
2.定性試験
粉砕した検体20.0gを200mlの三角フラスコに量り採り,クエン酸緩衝液50mlを加え,ピクリン酸紙をつるしたコルク栓で密栓し,25〜35°で時々静かに振り混ぜながら,3時間放置した後,酒石酸2gを加え,直ちに上記のコルク栓で密栓し,時々振り混ぜながら50〜60°で1時間加熱するとき,シアン化合物が存在すればピクリン酸紙は赤褐色に変わる。
3.定量試験
粉砕した検体25.0gにクエン酸緩衝液200mlを加え,密栓して振り混ぜた後,25〜35°で3〜5時間放置し,更に水100mlを加え,水蒸気蒸留する。受器には200mlの三角フラスコを用い,あらかじめ5%水酸化カリウム溶液5mlを入れ,受器を傾け,冷却器の下端を液中に浸す。留液が約150mlとなるまで蒸留し,この留液に10%ヨウ化カリウム溶液5mlを加え,0.05mol/l硝酸銀溶液が濁るまで滴定する。
0.05mol/l硝酸銀溶液1ml=2.70mgHCN
(4) (2)及び(3)に掲げる試験法と同等以上の性能を有すると認められる試験法
3 豆類の使用基準
シアン化合物の検出される豆類は生あんの原料以外に使用してはならない。
4 野菜の加工基準
発芽防止の目的で,ばれいしよに放射線を照射する場合は,次の方法によらなければならない。
(1) 使用する放射線の線源及び種類は,コバルト60のガンマ線とすること。
(2) ばれいしよの吸収線量が150グレイを超えてはならないこと。
(3) 照射加工を行つたばれいしよに対しては,再度照射してはならないこと。