(更新日:2010/12/01,2010/11/23)
資料 24 食品由来急性下痢症患者数の推定について(未定稿)
(1) 「厚生労働科学研究費補助金(食品の安心・安全確保推進研究事業)
食品衛生関連情報の効率的な活用に関する研究
平成20年度分担研究報告書
宮城県における積極的食品由来感染症病原体サーベランスならびに急性下痢症疾患の実被害者数推定(微生物に起因する原因不明食中毒の実態調査に関する研究)」
の要点の紹介
この報告書の要点は、表1になると思われる。これは、2008年に読売新聞で紹介された届出数と推定数の倍率とはかなり開きのあるものがあるが、届出件数は氷山の一角であるようだ。
このことは自らの体験を通してもうなづける。報告書の本文にもあるが発生年や菌の種類によるバラつきもあり、まだ検討すべき課題も多いようだが、現在のところ一応の目安となるものであろう。
表1 日本全国における急性下痢症疾患の被害実態推定結果と食中毒患者報告数の比較 | ||||||
検出菌 | 年度 | *推定 食品由来 患者数 |
**食中毒 患者数 |
*3)倍率 | 倍率 平均 |
*4)読売記事 の倍率 |
Campylobactor (カンピロバクター) |
2005 | 1,545,363 | 3,439 | 449 | 596 | 120 |
2006 | 1,641,396 | 2,297 | 715 | |||
2007 | 1,494,152 | 2,396 | 624 | |||
Salmonella (サルモネラ) |
2005 | 253,997 | 3,700 | 69 | 62 | 240 |
2006 | 145,512 | 2,053 | 71 | |||
2007 | 165,867 | 3,603 | 46 | |||
V.parahaemolyticus (腸炎ビブリオ) |
2005 | 83,312 | 2,301 | 36 | 43 | 30 |
2006 | 62,579 | 1,236 | 51 | |||
2007 | 55,541 | 1,278 | 43 |
* 米国の胃腸炎疾患における食品由来の割合より算出(Mead
et al. 1999)
** 全国食中毒患者数(厚生労働省食中毒統計資料、平成17年度〜19年度食中毒発生状況)
*3) 倍率=推定食品由来患者数/食中毒患者数
*4) [食ショック]揺らぐ安全(3)レバ刺しに「加熱用」
2008年3月21日 読売新聞より
(注) 黄色背景部分は管理人が加筆
(2) 厚生労働省食中毒統計に見る広島市とその他の機関の報告数について
現在、食中毒患者数の実態に最も近い数を報告しているのは広島市であると思われる。
平成12年から平成21年まで過去10年間の累計で患者1名の食中毒事例は全国で
5,844 事例報告されたが、図1 のとおりその65%が広島市からの報告であった。
広島市において食中毒の発生件数が多いのは広島市が他の都市に比べて格別非衛生的または、衛生的でない食習慣をもつという証拠はない。
したがって、発生件数が多いのは広島市が他都市と違い、患者が1名のみで原因施設や原因食品が特定できない場合も食中毒事件として厚労省に届け出ているのがその理由である。
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図1 食中毒患者 1名事例の報告数 |
また、同じく報告事件数累計について、人口において遙かに多い東京都と比較してみると表2および図2のとおりでありその差異が分かる。
しかし、東京都区部では2名以上の事件数が多いことから患者数としては図3のとおり広島市を上回る。
そこで、人口10万人当たりの患者数(罹患率)及び10万人当たりの事件発生率を計算したのが図4である。
年による変動があるので計算は平成12年から平成21年までの10年分の累計を出し10で割って年あたりの値とした。
表2. 広島市と東京都区部の食中毒統計の比較
広島市(人口 1,176,934) | 東京都区部(人口 8,846,580) | |||||||||
事件数 | 患者数 | 事件数 | 患者数 | |||||||
発生年 | 総数 | うち2名 以上事例 |
うち1名 事例 |
うち2名 以上事例 |
患者数 計 |
総数 | うち2名 以上事例 |
うち1名 事例 |
うち2名 以上事例 |
患者数 計 |
平成12年 | 611 | 29 | 582 | 251 | 833 | 75 | 65 | 10 | 2,176 | 2,186 |
平成13年 | 551 | 29 | 522 | 424 | 946 | 61 | 51 | 10 | 778 | 788 |
平成14年 | 555 | 27 | 528 | 312 | 840 | 80 | 72 | 8 | 2,330 | 2,338 |
平成15年 | 451 | 13 | 438 | 983 | 1,421 | 77 | 68 | 9 | 1,839 | 1,848 |
平成16年 | 500 | 12 | 488 | 136 | 624 | 64 | 60 | 4 | 1,582 | 1,586 |
平成17年 | 486 | 17 | 469 | 188 | 657 | 85 | 79 | 6 | 2,323 | 2,329 |
平成18年 | 261 | 12 | 249 | 207 | 456 | 88 | 86 | 2 | 1,901 | 1,903 |
平成19年 | 227 | 19 | 208 | 709 | 917 | 65 | 62 | 3 | 1,127 | 1,130 |
平成20年 | 230 | 19 | 211 | 1120 | 1,331 | 86 | 84 | 2 | 1,250 | 1,252 |
平成21年 | 124 | 7 | 117 | 101 | 218 | 92 | 89 | 3 | 1,412 | 1,415 |
計 | 3,996 | 184 | 3,812 | 4,431 | 8,243 | 773 | 716 | 57 | 16,718 | 16,775 |
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図2 広島市と東京都区部の報告件数比較 | 図3 広島市と東京都区部の患者数比較 |
図4、5の過去10年間の比較から広島市では患者数1名事例だけでなく2名以上事例においても発生率、罹患率ともに高く、
言葉を換えれば、食中毒事件を東京都区部に比べよく把握できていることが分かる。
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図4 広島市と東京都の発生率比較 | 図5 広島市と東京都の罹患率比較 |
表3 食中毒の発生率と罹患率(対10万人)
人口 | 発生件数 | 発生率 | 患者数 | 罹患率 | |
広島市 | 1,176,934 | 400 | 34.0 | 824 | 70.0 |
東京都区部 | 8,846,580 | 77 | 0.9 | 1,678 | 19.0 |
全国(広島市除く) | 126,515,066 | 1,202 | 1.2 | 29,016 | 22.9 |
全国 | 127,692,000 | 1,602 | 1.3 | 29,840 | 23.4 |
注:発生件数と患者数は平成12年〜平成21年の10年間の平均値
(3) 食中毒の実発生件数と実患者数の推定
全国での食中毒の届出率=発生率が広島市と同じだとするとき、人口比によって全国での発生件数と患者数を推定してみたのが 図6である。
発生率を広島市の過去10年間の平均である人口10万人当たり34.0、罹患率を10万人当たり70.0としている。
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図6 届出数と推定数 |
近年広島市の食中毒の捕捉率は表2からも明らかなように下がっているようで平成21年のデータで計算すると広島市の罹患率は18.5、東京都区部が16.0とあまり差がなくなっている。
これに対し東京都区部及び全国の食中毒発生件数は広島市ほどには減少傾向にない。このため、現時点のデータより過去の広島市のデータの方が比較的実数に近かったと考えられることから、10年平均をとった。このことにより、近年のサルモネラ食中毒の減少も反映して比較的妥当な指標と考えられた。
広島市の食中毒統計がノロウイルスについては患者数1名事例を積極的に計上してはいない。ノロウイルスについても食品由来の可能性があるものを積極的に計上すれば今回の推定数よりも多くなると思われた。
最後に:
食中毒を発病しても軽症なため医療機関を受診せず、検便をすることがなければ食中毒事件としてはまず計上されない。感染しても発症しなかった事例や軽症で医療費もかからなかった事例を食中毒と計上することにどのような社会的メリットがあるのか疑問でありこのあたりの線引きも難問である。
資料:東京都区部の人口、広島市の人口、総人口
厚生労働省 食中毒統計
食中毒統計(広島市報告の検討)(管理人)
文献:厚生労働科学研究データベース http://mhlw-grants.niph.go.jp/index.html
データベースの文献番号200837016A
厚生労働科学研究費補助金(食品の安心・安全確保推進研究事業)
食品衛生関連情報の効率的な活用に関する研究
平成20年度分担研究報告書
宮城県における積極的食品由来感染症病原体サーベランスならびに急性下痢症疾患の実被害者数推定
(微生物に起因する原因不明食中毒の実態調査に関する研究)(抄)
ファイル200837016A0007.pdf
p127〜135
ファイル200837016A0008.pdf
p136〜155